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冬限定メニュー、植物性100% アフタヌーンティーについて Part.12020/12/12

SUN AND MOON

2020/12/122020:12:12:11:48:16

冬限定メニュー、植物性100% アフタヌーンティーについて Part.1

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通常冬季休業をいただいている THE KOKONOEのレストランですが、今年の冬は、お食事ではなく、特別メニューで営業することにしました。

その理由。

このご時世、企業でさえ全国4000件近く倒産が相次いでいる中、こうやって自分達のお店が存続できていること自体が恵まれているとしみじみ感じているからです。

悲しいことですが、生活様式の変化が理由で、7月以降から自分の命を絶つ人が後を経ちません。前年比で毎月増加傾向とのこと。どんな形でも今命がある人達は、自分たちの命を大事にし、今自分が本当にやるべきことは何なのか考えなければいけないと感じます。

自営業だけでなく、会社勤めのサラリーマンさえも明日がわかりません。大手広告代理店である電通も社員の個人事業主化を進めていると言います。HONDAやRICOH、三菱自動車といった大企業が早期退職者を募っています。しかも、45歳から!まだまだ働き盛りで、中間管理職ほやほやくらいの人材を退職の対象にしている現状は今の日本の経済を表しているだけでなく、若い人の生き辛さを象徴しているように感じます。

今回は希望退職者ですが、この経済状況で、次、もし45歳で首を切られたら、次の転職先があるとも限りません。
専門のスキルもなく、その歳までただ毎日日銭を稼ぐ感覚で会社勤めをするだけで日々が終わり、何もブラッシュアップもしない働き方をしていたら、いざというとき起業もできません。一体どうやって食い繋ぐのか、、、。この状況で戦々恐々としている45歳の方もいるのではないでしょうか。

今の日本の人口の多くを占めているバブル時代を謳歌された方々には理解できない経済状況と価値観に世の中が移行しているのではないかと思います。

星野リゾートの星野社長の言葉ではないですが、このご時世に、観光で人を右から左に動かし、観光地で人を密にさせるだけではさまざまな問題が起こるのは当たり前の話であり、観光業や経済を守るのはそのような単純なことではなく、観光客の一斉移動のピークをなくし、一年を通じて一定量の観光客・人の流れをバラす仕組みが必要だったはずです。

夏など季節のハイシーズンにはお客様が多く、ホテルの部屋の値段も上がるのに、冬などシーズンが終わってしまえば全くお客様が来ないから閉めてしまうというスタイルを観光業界が変えていかないといつまでも状況も変わらないのではないかと思います。

ホテルの部屋が高騰し、このご時世で部屋も満室になるような密の状況での観光は、そもそもお客様も迎える側も得策ではないのではないでしょうか。

1.7兆円かけてGoToをやることよりも、観光業界が変革できるような下地作りや下支えをするのが行政の本来やるべきことだったように思います。(THE KOKONOEはGoToは導入していません。)

そのようなこともあり、今季は冬も営業させていただき、来年1月8日(金曜日)から2月まで冬季限定メニューで提供予定です。

そのメニュー内容ですが、100%植物性です。

なぜ100%植物性なのか。

少し遠回りになりますが、月初に発売されたある料理研究家の方の本から抜粋したいと思います。

本が届いてからパラパラとページをめくり、本の「おわりに」に目が行き、そちらを先に読んでちょっと驚きと共感がありました。

その方はテレビにも出演されるほど有名で、植物性食材をメインで使った料理研究家の方です。
とても人気のお料理教室も主催されており、紹介がないと受けられないほど。
人気の理由は、語り口やお話が面白く、斬新なレシピとの評判を、当時そのお料理教室に通っていた知人から聞いていました。

その知人からお料理教室も誘われましたが、正直に言えば、自分の料理のスタイルとも違うし、なんとなく方向が違うような感じがしていて、それほど思い入れがあるわけでもなく(ごめんなさい!)、これまで過去の出版物も1冊目を通したくらいでスルーしていました。。。

その料理研究家の方は、どちらかというと周りなどを気にせず、どこ吹く風、独立独歩の道を進んでいるタイプの方だと思っていたし、おそらく実際も良い意味でそうだと思うのですが、(でないとこんなに有名になれない)

進む道の中で、「不毛さ」を感じていたという話が、その料理本の中で書いてあり、私の中ではとても意外でした。

その「不毛さ」は私も感じていた事だし、今こうして食の選択肢について景色が様変わりしていくのを同じ気持ちで見ていたのだと思うと、戸隠という僻地にいても感じあえることが嬉しかったです。

内容は、以下抜粋。(中略)

"卵を使わなくてもふんわり、生クリームがなくてもクリーミー、
バターがなくても、ゼラチンがなくても、小麦粉がなくても......。
そんなことばかり、私は20年以上も考え続けてきました。

それはまるで、砂地にずっとタネを植え続け続けながら、
じりじりと、前に進んだり、後ずさりを繰り返す、
そんな状況だったかもしれません。

でも、ふと見渡すと、景色が変わって来ています。

街に出れば、高校生がサンドイッチを片手に、
あたりまえのようにソイラテを注文しています。

大手メーカーからは、植物性のプリンが発売され、スーパーにも並び始めました。
そのプリンを嬉しそうにかごに入れている親子づれも見かけます。

「なぜ卵を使わないの?」
「バターの代わりになにを使っているの?」

誰もがそんな質問をせずにはいらなれなかった時代はもう終わり、
卵のプリンがあるように、卵を使わないプリンもあって、それぞれ自由に選べる。
食べたい人に自由があるように、食べたくない人、食べられない人にも自由があって、堂々と新しい選択ができる。
そんな未来に少しづつ近づいてきているんだと思います。

砂地だと思っていたところは実は土で、ちゃんと木が茂っていました。
その木のキラキラした葉を一枚一枚ながめながら、
そうだ、あと少し、もう少しだけ頑張ろうと、今日も心に誓います。
いつか森になる日を夢見ているのです。" 

(白崎裕子"白崎茶会植物生まれのやさしいお菓子 卵、小麦粉、乳製品を使わないかろやかなおいしさ")


食べられない人の自由。

さまざまな理由があると思いますが、食べられない食材があることを伝えても「そんなの贅沢!わがままじゃないの?」とか「カッコつけてるの?」「え?。。。変わってるね(引いてる)」というリアクションが10年前くらいは当たり前でした。

友達の中には「アレルギーで食べれないんです。。。」と言っても「そんなの食べてれば慣れてくるもんでしょ!」と言われ、辛い思いをしている子もいました。

給食で牛乳が飲めない子供に対して、「医師からアレルギーの薬を処方してもらって、牛乳を飲めばいいじゃないか。」と平気で言う教員もいたと聞きます。(根本解決に何にもならないんだけどね。。。)

そして、今でもそんな風に思っている方が中にはまだいらっしゃると思います。

おりしも、先月に自分の体で排出を経験し、合う合わないは人それぞれで、やはり自分に合わないもの・食べたくないものは食べるべきではない、と強く思いました。

また、当店でお出ししているお食事も基本的には植物性です。

お越しいただいた方々が口を揃えて言ってくださるのは、

"たくさん食べても翌日体が軽い!"

"動物性を食べないって、こんなにも軽やかなのね。"

"植物性だけでもこんなに満足できて、沁みる美味しさがあるなんて。。。"

ということでした。

それは、作り手冥利に尽きるお言葉でありますが、私の腕の話はさておき、兎にも角にも植物性食品がもつ力だと日々実感しています。

私も森になる日を夢見て日々精進しています。

とは言いつつ、動物性食品を否定しているわけではありません。
私自身、今は植物性だけで生きているわけではなく、季節によっては動物性も少々取り入れています。
質の良い卵やバターなどの動物性を使ったお料理やお菓子もそれはそれで美味しいし、私たち人間と近い命をいただくことの意味を考えさせられるものです。

ポイントは、質が良いこと。
植物性100%でも質が悪ければ、その意味はあまりないと思います。

また、毎日3食、自分の意思で口に運ばれる日々の食の影響について、この10年の間に目覚ましい科学の発達でさまざまなことがわかってきています。

それは、食習慣は単に自分だけへの影響の話ではなく、少なくとも2代先に影響を及ぼすという事が科学的に立証されてきたからです。

次回へ続きます。

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THE KOKONOEシェフ 水谷 江希

THE KOKONOEシェフ水谷 江希

小中高をシンガポール・アメリカで過ごし、絵画修復士となるため奨学金を得てシカゴ美術館附属美術大学に合格。両親の都合で帰国し、筑波大学に入学。卒業後、外資系メーカーに入社し、プロダクトデザイナーとして働く。その後食の世界へと転身し、料理教室の開催・講師業を務める。2020年、シェ・パニースへインターンシップのため渡米。料理研鑽に励み、現在に至る

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